なんとなく、つれづれ草紙。
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あなたの声を最後に聞いた日のことは、いまでもはっきりと覚えています。あれはそう、ちょうど高速道路のインターチェンジを降りるほんの手前で、あなたから1年ぶりくらいの着信があったのでした。インターチェンジを降りて、車を停めて、あなたに電話をかけなおしました。そうだったよね?あなたは、あなたのお母様が亡くなった頃にわたしと話したときの会話になんとなく苛立ちを覚えて、それからわたしとしばらく距離を置いていたと言いました。これまでそんなことはよくあったから、わたしもそんなものだと思っていました。それに、あなたとわたしは遠く離れていて、滅多に会うことすら出来なくて、タイミングが合わなかったらメールも電話もお互い出来ない時期もあって。だから1年くらい、あなたからのメールの返事がなくても、わたしは特に心配することもなくいたのでした。真夜中に酩酊して電話してくるような状況よりは、ずっと安心だと。でも、あなたからの久しぶりの電話に、わたしは逆に胸騒ぎをおぼえました。これまで、ハンドルネームで呼んでいたわたしのことを、はじめて名前で呼び、あなたはこう言いました。「今まで、ごめんね」。わたしの言葉に苛立っていた自分すら許して欲しい、と確かそんなようなことをあなたは言ったのでした。「どうして?あなたは何も悪くないじゃない。わたしのほうこそ、これからもよろしくね。また会おう。今年は無理だけど、来年はあの歌手のコンサート、一緒に行けたらいいね」わたしはそう言って電話を切りました。それからほんの1ヶ月くらいあとでした。あなたの妹さんと名乗る方からのメールと、あなたの携帯電話からの1回きりの着信。あなたが亡くなったということ、お通夜とお葬式の案内のメール。あなたの携帯電話には、何度かけなおしてももう繋がりませんでした。信じられなくて、もしかしたら騙りかもしれないなんて不純にも考えてしまって、確か妹さんにはそっけなく冷たい返信をしてしまったような気がします。いまだにあなたがどうして亡くなったのかすら聞くことさえ出来ずにいます。本当に亡くなったのかどうかすら、わからずにいます。あれから2年が経とうとしていて、わたしはあなたのことをもう少し理解出来そうな気がしています。それなのにあなたはもういないのです。あなたと一緒に撮った写真も、きっとあなたのパソコンの中に眠ったままで、わたしの手元にはあなたの写真すらありません。あなたを忘れない、なんて約束するつもりはないけれど、あなたのことはきっと忘れることが出来ないと思います。だからいまも、あなたと一緒にいつか写真を撮ったりコンサートに行ったりすることを、夢見ているのです。
夜のスーパーマーケットで、久しぶりに食事でも作ろうと、籠の中に食材を放り込みながら歩く。
人参、玉葱、鶏肉、調味料、卵、牛乳、キャベツ、カロリーゼロのコーラ、ブルーベリーのジャム、そしてお行儀よくパックにおさまった綺麗なさくらんぼ。何を作ろうかな、ごくごく普通のカレーライス、いやいや同じ材料で肉じゃがだって出来る、それよりも彩りの良い冷やし中華?楽しくなって、籠はいっぱいになる。
突然、これからごはんを炊いて、洗い物をして、食材に火を入れて、という現実に思い当たる。急速に疲労を思い出す。やっぱりやめよう。大して食欲もないのに、無理にごはんなんて作って、どうするの。やっぱり、やめよう。
だけど、食材をひとつひとつ、棚に戻しにいくことすら、面倒で。
棚と棚の間に立ちすくむ、わたし。
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2017年10月28-11月1日、11月21-22日。
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** 撮影 **
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