エメラルド

数少ないわたしの長所のひとつは、こう見えて、意外と奥ゆかしくて慎ましい、ということなのだと気がついた。
そして、こう見えて、意外と冷静で理性的なのだということも。
本当に欲しいものやしたいこと、して欲しいことは口に出せない。そして、気軽に甘えてみることも得意ではない。

だけどそんなもの、何の役にも立ちはしないということにも、気がついた。

もうすこしだけ一緒にいたいと口にしても良かったのかもしれないのに。
走り寄って上着の裾を掴むことだって出来ないわけじゃなかったのに。
今日は特別な日なのと言うべきだったかもしれないのに。

潮が満ちる。

緑色の月が君のほそい顎のラインを照らしていた。
ああ、なんて綺麗なの。
眩暈のように思わず伸ばしかけた手に、気づいたりしなければ良かった。

触れれば壊れる。だけど壊すつもりで凶器を持ち出した。
それなのに。

潮が引く。

行き場をなくして螺旋を描き、たたずむ指には、エメラルド。
 

言葉をチェイサーにして狂気と凶器を飲みくだす、ひとりよがりな緑色の月の夜のお話。

共犯者

 













一緒に堕ちてなんてくれないくせに
どうしてそんなことが言えるの

十六夜

 













月のせいにして言葉を飲み込んだ。
満月だったらきっと言えた。

こわしたくない
だから触れない　だから言わない　だから聞かない

こわしたい
だから触れて　だから言って　だから聞いて

さあ　
覚悟は　いいですか。
中途半端な想いの結末を見届ける覚悟は。

何もきこえない、何もみえない

 








あなたの気持ちが読めない

そうじゃない、
きっと読みたくないだけ。

わたしの気持ちも、読ませない。

居場所

あなたの居場所はここではないのです
だってあなたは光の世界からきたのだもの

ここではあなたはまぶしすぎて
わたしは目を開けていられないから

さあ、
わたしの目が潰れてしまう前に