impatience

 










化粧はじょうずになった
自分に似合う服も知っている
それなりの振る舞いも少しは身につけた

ひきかえに失っていくものを鏡の中に見つけるたびに
残された時間はそう長くないことを知る

怪物になると決めたわたしにとってそれはなんでもないことで
それどころか　いくらでも受けて立つと決めているのだけど

…ああ　お願い　それ以上火を点けないで
燃え尽きる時が早くなるだけだから

what little pride

 









そんなものがまだわたしに残っていたなんて、ね。


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勢いがないと言えない
午睡から目覚めた瞬間　時が満ちた　と思った
日が暮れる前に言わないと　
きっともう二度と言えなくなる

今夜1時間だけ会いたいって電話するんだ
ラジオから流れてきたあの歌のように

もう二度と会えなくなるその前に

最初から何もなかったと思えば、
壊れることも、壊すことも、怖くはないでしょう？

Baiser Ⅲ

 













そういえばさ、気づいてた？
僕は君の名前を知らないってこと

君は僕の名前を決して呼ばないってこと

その冷たい唇を開かせたくて、僕は

Baiser Ⅱ

マクロレンズ越しに視線が合って
その眼の奥にわたしが映っているのが見えたとき
眠っていた知らないわたしが声をあげた

崩れる
堕ちる
攫われる

震える指がさまよって
ためいきで　シャッターを切った




…本当に好きなものは、誰にも見せない。

乖離

 










生物学的ナマミのわたし
制服を纏って役割をこなすわたし
壊された鳥籠を再び組み立てるわたし

その隙間の空白こそがわたしの発条であるはずなのに

絡まりあう、わたし

ガラスケースの中のあなたに欲情しているなんて
いったいあなたの何が欲しいというの

壊して閉じ込めて壊したい
壊して連れ出して壊したい

誰の声に従えばいいの
全部わたしの声なのに

ねえ　これじゃ立っていることすら出来やしない