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なんとなく、つれづれ草紙。



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P7091964.jpg髪を短く切って帽子をかぶり、チェックのシャツとショートパンツに素足のスニーカー。スーパーマーケットの籠を押す。ぎっしり埋められた棚の色とりどりのパッケージ。トマト缶の蓋に映りこんだわたしの目はどこを見ているのか自分でもわからない。雑貨売り場を早足で通り過ぎる。壊したいほどすきだった。骨付きチキンと玉葱とにんじん。きっと夢を見ているんだ。とろけるようなポトフをつくろう。あなたのために。マッシュルームとグリーンアスパラ。違う、そうじゃない。足元がふらつく。ティッシュペーパーの山をうっかり崩しそうになる。あなたはわたしの作ったポトフを食べたりはしない。通路を抜けるときらきら光るりんごが目に入る。スプーンを口に運ぶあなたのきれいな指。ああ、そうだ、お花を買おう。わたしはからだもこころも全部預けてもよかったのに。母親を探す子供の声が耳に刺さる。いっそ殺してよ。いつも完璧でいたいのに。ガラスに映るわたしはまるで他人。冷たい唇で見えないあざを残したくびすじ。お部屋に映えるビタミンカラーのガーベラを1輪。あなたはわたしには青が似合うと言った。アイスクリームはチョコとナッツ、それからキャラメル。嘘をついたのは誰?ラヴェルのボレロが耳をかすめる。まぶしい。どうして大切なところでだけ、いつも間違えるの。息がくるしい。受け入れてなんて言わない、手を握っていて欲しいだけ。ああそうだ、薄力粉とベーキングパウダーも忘れずに。黒くて長い髪がさらりと揺れる、あれはわたし?正しい愛し方ってどうすればいいの。はるさめのサラダ。海老のチリソース。たった一度の逢瀬ですべてをなくした女。デミグラスソースのハンバーグ。小さなパックに詰まって並ぶ。あなたに触れたい。珈琲の匂いが鼻をかすめる。息がくるしい。高額紙幣を差し出して硬貨を受け取る。ねえわたしが売り渡したものはいったい何だったの。何を引き換えに何を得たの。外はまぶしくて目を開けることもできない。ねえどうやってここから出たらいいの。どうやって。


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ゆるく完成したわたしの運命に紛れ込んだちいさな隕石を
手に入れようとしたことが わたしの 罪でした。

罪の大きさにおののきながら
罰がくだされるのを 待ちましょう。
静かに静かに1段ずつ 階段をのぼるだけのこと。
いつ終わるかわからない階段を、目隠しをして、
踏み外さないようにゆっくりゆっくり。
自ら逝くことすらもうわたしにはゆるされないのです。

世界はどうしてこんなに綺麗なの。
わたしは 息を吸うことすら 苦しいのに。

きっともうわたしは世界の一部ですら、ない。


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明日死ぬかもしれないという、
いい意味での緊張感と、 悪い意味での不安とを、
いつも抱えながら歩いています。

だからわたしの写真はいつも遺影。
だからわたしの言葉はいつも辞世の句。

あなたにとっての最後のわたしが、
どうか少しでもきれいでありますように。

そして次の瞬間には、かけらも残さず忘れてくれますように。


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明日はもう、新しいわたし。

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ねえお願い、
思い切り傷つけてよ。

あなたに伸ばしてしまう腕も、
あなたに向かっていく足も、
あなたを求めてやまない唇も、
全部切り落としてしまってよ。

必要なものはひとつ残さず用意するから。
ねえ、完全犯罪で。

そうしてどこかへ捨ててください。
握りつぶして踏みにじって叩き落として。
手を触れるのも嫌なら、焼きつくして海に散らして。

奪い取ったものを返すような真似を、
もう二度としないで。



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わたしは、きれいじゃない。
それは知っている。
だけど自分を撮影してもらうのは、「わたしの妄想をかたちにする」という目的ただひとつ、そのため。
わたしがきれいかきれいじゃないか、は、そこではあまり問題にならない。
でも、普段着のわたしを撮影する/される、ということは、とても苦手。
だって、きれいじゃないわたしを、わざわざ見せつけられることになるのだもの。

でもそれが、わたしなの。
そろそろ受け入れなければいけない。

わたしはもうそろそろ人生を折り返さなければならないのだけれど、
まだ、うまくおとなになりきれていない。
すこし前、ようやくわたしをわたしとして認めることができるようになって、
ようやく、たのしい、と思えることが、すこしずつできるようになってきた。
でも時間は全然待ってくれなくて、
わたしはそろそろ、いろいろなことを諦めないといけない時期にさしかかっている。
それなのに、まだ、うまくおとなにすらなりきれていない、わたし。

そんなわたしは魔女になるしかないのだ。

でも、魔女になる寸前の、ほんのちょっとのあいだ、
いまわのきわの歌はきっとわたしのいのちのなかでいちばんきれいだから、
どうしてもそれをあなたにあげたかった。

だからいま。
いまわのきわの歌を刻みつけるために、
わたしは普段のぎこちない笑顔でレンズを見つめてみることにした。

きれいじゃないオンナノコから、
魔女になるわたしへの、レクイエム。



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** 出演 ** 金平糖企画新作公演「ニュースペーパー」 2017年10月28-11月1日、11月21-22日。 ** 掲載 ** カメラピープルブックレーベル 「だれがなんといおうとだいすきな写真」採用 ** 撮影 ** どりばん「どり盤」CDジャケット、ポスター撮影
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